今日のごはん
2005/02/18よりブログ開始。ぽわんと毎日を送っている、ある人間の日記。時折、絵日記にもなります。
2012.09.08
こんな形で お別れすることになるなんて、予想していなかった。
8月、帰宅した私を待っていたかのように電話がなった。
元夫のお兄さんから。
「〇〇が自殺した」
何とやりとりしたか、詳細は覚えていない。
彼が住んでいた県の山の中で。
発見されたのは、約一週間後。
遺体は見ない方がいい、明日家族が身元確認に行くことになっている、と。
「本当に、彼なの?」
「99%間違いないって」
体の中心に大きな塊ができて
息ができない
お兄さんは数日後に帰国し連絡をくれた。
明日の早朝、車でそこに行くこと
まだ何も決まっていないが、数日はそこに留まる、と
火葬場に娘を連れて行きたかったが、
時間的都合で間に合わなかった。
いや、行きたくなかったのかもしれない
彼の死に向き合いたくなかった、認めたくなかった
翌日、現場で献花すると聞いて
勤務先に休みを一日もらい、娘を連れて新幹線に乗った。
現場で冷静でいられるか、自信が全くなかった。
半狂乱になった方が楽だろうと思った
現場に着く前に、自分の立ち位置を決めて、それをしっかり保っていなさい、という
友人からのアドバイスを聞いて
「ああ、私は娘が父親に最後のお別れをするのに付き添っていくだけだ」
ずっと、呪文のように心で繰り返した。
「最期がどうだったか、考えないで。
それは、彼の抜け殻だからね。
もう、彼は旅立ったんだよ、楽になったんだよ」
その言葉もお守りにした。
彼の兄弟たち、友人たちと久しぶりに会った
ちゃんと話をしていたと思う
雨が降っていた
現場は細い道しかない、番地もない山の中
滝に降りていく細い道の先
行きたくなかった
落ち葉が降り積もって、急斜面の細い道を雨の中降りるのは危険だと
みんなが判断して、車を置いていた場所で献花し、線香をあげた
知人の一人が、「お兄さんだけでも、現場に行ってこられたら」と話し出した。
「危険だから、行かない方がいい」と口を出した私を、冷たいと思ったかもしれない
行ってほしくなかった
行ってくれば、そこがどんな場所か聞いてしまう
車の中で、彼の白い箱を抱いた
まだ、煙の香りがしていた
こんなに小さくなったのに、重たいね
そこには、たくさんのアブがいて、人を襲ってきた
「こんな山の中で、いつもはどうやって暮らしてるんだ、こいつら」
何気なく、お兄さんが言った
そこには、一週間、彼がいた
彼の部屋は、荒れ放題だった
住んでいた人の心のように
みんなで片づけた
NPO法人をどうするかという問題があったので、重要書類を探すのが
主な目的
机の上、床の上、ゴミ箱のようになっていた部屋をあらかた片づけた
「彼は梅酒が好きだったの?」5~6本残っていた紙パック
「彼女が好きだったから、一緒に飲むのを楽しみにしていたみたい」
その彼女に、「他に好きな人ができたから」とふられ
何とかよりを戻せないかな、とお兄さんに相談していたらしい
去年の夏のことを想った。
汗だくになって、片づけた
彼の部屋を掃除するのは、何回目だろう
いつも、こんな風に荒れていた
彼のメガネ、時計
少しでも身に着けていたものが欲しかった
でも、私に何の権利があるだろう
言い出せなかった
お兄さんと会って、何度か話した
数時間
彼の話をするのは、心が安らいだ
彼女には、プロポーズするつもりだったらしいこと
離婚したことは言えても、子供がいるとは言ってなかったこと
私からは、彼と知り合ったのは、彼が18になる前の年からだったことなど
泣けなかった
泣くと、認めたようになる気がして
塊を抱えたまま、仕事を続けた
いつも歯を食いしばっていることに、ある日気が付いた
疲れて眠っても、3時間ほどで目が覚めてしまう
このままじゃ、ダメだとわかっていても、どうしようもなかった
思い切って休んで、どこか海か山でも見に行けばとアドバイスされた
海にしよう、山はもう見たくない
帰りに、どこに行くあてもないのに、お金を下した
帰宅途中のバスの中、携帯にお兄さんの電話
「部屋の鍵、渡せるよ」
片づけ足りなかった私が頼んでいたのだった
お兄さんと向こうで合流してと本当は思っていたが、日程の調整がつかないから、と
一人で?
娘は「大丈夫?」という顔をして私を見た。
「大丈夫だよ、移動はタクシーだし」
そんな心配ではないのをわかっていたけど、そう答えた
葬儀の日程も、ようやく決まった
「それを区切りにしなくちゃ、ね」
「泣くのはいいけど、自分の心を消耗させちゃだめだよ」
頭でわかっていても、逆らい続ける気持ちを抑えられない
数日前から、彼の部屋のパソコンは生きていることに気が付いた
メールを送信できるのだ
思いの限りをぶつけてみた
狂ってるかな、お兄さんに打明けたら、自分もやった、という
同じような気持ちを持っていた
指定ゴミ袋をたくさん買って、部屋についた
かけっぱなしだった洗濯物
ほとんどが知らない服
トイレには彼女の生理用品まであった
浴室の横にあった衣装ケースには、彼女の下着が一枚だけ
(通っていたか、一時住んでいたんだろうけど、別れるならもっていけばいいのに)
ベッドの枕元には通販で買った(外函と領収書まで保存してあったから)「オカモトくん」とジェル
すべてがほこりをかぶり、ずいぶん前から使われてなかった様子が見えた
馬鹿だなぁ、突然死んじゃうから
こんな恥ずかしいものも、残していっちゃって
ここ、ほとんどのものがまとめて処分されちゃうんだよ
私だからよかったけど、業者だったら、恥ずかしいでしょうが
傷つくと思っていたのに、苦笑してしまった
押入れの中からも、たくさんの書類や手紙が出てきた
職業訓練校を出て何とか就職したものの、パワハラを受けて退職したこと
破産宣告をして、生活保護をもらっていたこと
両親と喧嘩して、ここにきたこと
写真も出てきた、履歴書用のちいさいの
(昔から、写真うつり、最悪だったよね)
あがいていたんだね、懸命だったんだね
私の知らない、7年間
彼女がいて、少しだけでも幸せだった?
娘に夕食までには戻ると言っていた
17時、彼の家族が欲しがりそうなもの
腕時計と古いメガネを私がもらうことにして
すべてを持ち帰ることはできないな、懐かしい服、彼の匂いが残る服も
置いていくことにした
ブレーカーを落とし、窓を閉め、ゴミ袋だらけの部屋を出た
新幹線に乗ると、見事な夕焼け空だった
これは、あなたからのお礼?
「ありがとう」って、言ってくれてるのね
少しだけの身の回りの品だけでいいの
だって、あなたからは、ずっと前に
一番の尊い宝物をもらっていたんだもの
わたしから、言ったことあったかな?
一緒にいれば、傷つけあったね
もう、そんなに長い人生じゃないけど
きっとあなたのこと忘れない
どういうものが愛なのか、私にはわからない
だから、最後に伝えるのは
ありがとう、さよなら
8月、帰宅した私を待っていたかのように電話がなった。
元夫のお兄さんから。
「〇〇が自殺した」
何とやりとりしたか、詳細は覚えていない。
彼が住んでいた県の山の中で。
発見されたのは、約一週間後。
遺体は見ない方がいい、明日家族が身元確認に行くことになっている、と。
「本当に、彼なの?」
「99%間違いないって」
体の中心に大きな塊ができて
息ができない
お兄さんは数日後に帰国し連絡をくれた。
明日の早朝、車でそこに行くこと
まだ何も決まっていないが、数日はそこに留まる、と
火葬場に娘を連れて行きたかったが、
時間的都合で間に合わなかった。
いや、行きたくなかったのかもしれない
彼の死に向き合いたくなかった、認めたくなかった
翌日、現場で献花すると聞いて
勤務先に休みを一日もらい、娘を連れて新幹線に乗った。
現場で冷静でいられるか、自信が全くなかった。
半狂乱になった方が楽だろうと思った
現場に着く前に、自分の立ち位置を決めて、それをしっかり保っていなさい、という
友人からのアドバイスを聞いて
「ああ、私は娘が父親に最後のお別れをするのに付き添っていくだけだ」
ずっと、呪文のように心で繰り返した。
「最期がどうだったか、考えないで。
それは、彼の抜け殻だからね。
もう、彼は旅立ったんだよ、楽になったんだよ」
その言葉もお守りにした。
彼の兄弟たち、友人たちと久しぶりに会った
ちゃんと話をしていたと思う
雨が降っていた
現場は細い道しかない、番地もない山の中
滝に降りていく細い道の先
行きたくなかった
落ち葉が降り積もって、急斜面の細い道を雨の中降りるのは危険だと
みんなが判断して、車を置いていた場所で献花し、線香をあげた
知人の一人が、「お兄さんだけでも、現場に行ってこられたら」と話し出した。
「危険だから、行かない方がいい」と口を出した私を、冷たいと思ったかもしれない
行ってほしくなかった
行ってくれば、そこがどんな場所か聞いてしまう
車の中で、彼の白い箱を抱いた
まだ、煙の香りがしていた
こんなに小さくなったのに、重たいね
そこには、たくさんのアブがいて、人を襲ってきた
「こんな山の中で、いつもはどうやって暮らしてるんだ、こいつら」
何気なく、お兄さんが言った
そこには、一週間、彼がいた
彼の部屋は、荒れ放題だった
住んでいた人の心のように
みんなで片づけた
NPO法人をどうするかという問題があったので、重要書類を探すのが
主な目的
机の上、床の上、ゴミ箱のようになっていた部屋をあらかた片づけた
「彼は梅酒が好きだったの?」5~6本残っていた紙パック
「彼女が好きだったから、一緒に飲むのを楽しみにしていたみたい」
その彼女に、「他に好きな人ができたから」とふられ
何とかよりを戻せないかな、とお兄さんに相談していたらしい
去年の夏のことを想った。
汗だくになって、片づけた
彼の部屋を掃除するのは、何回目だろう
いつも、こんな風に荒れていた
彼のメガネ、時計
少しでも身に着けていたものが欲しかった
でも、私に何の権利があるだろう
言い出せなかった
お兄さんと会って、何度か話した
数時間
彼の話をするのは、心が安らいだ
彼女には、プロポーズするつもりだったらしいこと
離婚したことは言えても、子供がいるとは言ってなかったこと
私からは、彼と知り合ったのは、彼が18になる前の年からだったことなど
泣けなかった
泣くと、認めたようになる気がして
塊を抱えたまま、仕事を続けた
いつも歯を食いしばっていることに、ある日気が付いた
疲れて眠っても、3時間ほどで目が覚めてしまう
このままじゃ、ダメだとわかっていても、どうしようもなかった
思い切って休んで、どこか海か山でも見に行けばとアドバイスされた
海にしよう、山はもう見たくない
帰りに、どこに行くあてもないのに、お金を下した
帰宅途中のバスの中、携帯にお兄さんの電話
「部屋の鍵、渡せるよ」
片づけ足りなかった私が頼んでいたのだった
お兄さんと向こうで合流してと本当は思っていたが、日程の調整がつかないから、と
一人で?
娘は「大丈夫?」という顔をして私を見た。
「大丈夫だよ、移動はタクシーだし」
そんな心配ではないのをわかっていたけど、そう答えた
葬儀の日程も、ようやく決まった
「それを区切りにしなくちゃ、ね」
「泣くのはいいけど、自分の心を消耗させちゃだめだよ」
頭でわかっていても、逆らい続ける気持ちを抑えられない
数日前から、彼の部屋のパソコンは生きていることに気が付いた
メールを送信できるのだ
思いの限りをぶつけてみた
狂ってるかな、お兄さんに打明けたら、自分もやった、という
同じような気持ちを持っていた
指定ゴミ袋をたくさん買って、部屋についた
かけっぱなしだった洗濯物
ほとんどが知らない服
トイレには彼女の生理用品まであった
浴室の横にあった衣装ケースには、彼女の下着が一枚だけ
(通っていたか、一時住んでいたんだろうけど、別れるならもっていけばいいのに)
ベッドの枕元には通販で買った(外函と領収書まで保存してあったから)「オカモトくん」とジェル
すべてがほこりをかぶり、ずいぶん前から使われてなかった様子が見えた
馬鹿だなぁ、突然死んじゃうから
こんな恥ずかしいものも、残していっちゃって
ここ、ほとんどのものがまとめて処分されちゃうんだよ
私だからよかったけど、業者だったら、恥ずかしいでしょうが
傷つくと思っていたのに、苦笑してしまった
押入れの中からも、たくさんの書類や手紙が出てきた
職業訓練校を出て何とか就職したものの、パワハラを受けて退職したこと
破産宣告をして、生活保護をもらっていたこと
両親と喧嘩して、ここにきたこと
写真も出てきた、履歴書用のちいさいの
(昔から、写真うつり、最悪だったよね)
あがいていたんだね、懸命だったんだね
私の知らない、7年間
彼女がいて、少しだけでも幸せだった?
娘に夕食までには戻ると言っていた
17時、彼の家族が欲しがりそうなもの
腕時計と古いメガネを私がもらうことにして
すべてを持ち帰ることはできないな、懐かしい服、彼の匂いが残る服も
置いていくことにした
ブレーカーを落とし、窓を閉め、ゴミ袋だらけの部屋を出た
新幹線に乗ると、見事な夕焼け空だった
これは、あなたからのお礼?
「ありがとう」って、言ってくれてるのね
少しだけの身の回りの品だけでいいの
だって、あなたからは、ずっと前に
一番の尊い宝物をもらっていたんだもの
わたしから、言ったことあったかな?
一緒にいれば、傷つけあったね
もう、そんなに長い人生じゃないけど
きっとあなたのこと忘れない
どういうものが愛なのか、私にはわからない
だから、最後に伝えるのは
ありがとう、さよなら
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HN:
おっきい人
HP:
性別:
非公開
趣味:
ヒマがあれば散歩し、地面があれば落書きし、草原があればごろ寝。
自己紹介:
高校生の頃、友人からつけてもらったニックネームをそのまま使用しています。
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