顔その２

単なる自慢話。



自分の顔が大好きな人は、ほとんどいないよな。

ご多分に漏れず、私も好きじゃない。

これまで付き合ってきた彼達のほうが

よほど整った造作をしていた。

（ん？これって、私が面食いだって話だっけ？）



一つ一つのパーツも好みじゃないし

若い頃ならまだしも

最近頓に意地悪ばあさんに近づきつつある表情が嫌いで。

このへんは、前にも書いたと思う。



で、今度入社した会社でのこと。

所長に（何故か）大変気に入られた話はしたと思うが

実は同僚二人にも同様の効果を現したらしい。

話らしい話は、一切していない。

顔を合わせて挨拶しただけだ。

その面接時のわずかな印象で

友達にメールを打ったのだという。

今日面接に来た人が入ればいいのに、と。



「話もしてないのに、どうして私のことがわかったんですか」

「顔です、顔」



もう一度言っておきますが

私は柔和な顔でもなく、若々しい顔でもない。

実際に私をご存じの方はネット上では数少ないけれど

その方々なら証明できるはず。



でも、私はほとんど面接に落ちたことがない。

入社した後で、面接官が気に入ったからだと聞き続けた。

いったい何が気に入られるんだろう。



逆に面接に落ちた時の自分を考えると、思い当たる。

プライベートで気持ちが後ろ向いてる時

必ず、落ちる。

いくら、働かなきゃと思っていても

必死さだけでは駄目だった。

それよりは、面接を受けることが楽しいし

もし入れたらラッキーだけど、駄目でもなんとかなるさ

なんて思ってる時が受かる。



新婚時代始めた仕事もうまくいかず、貧乏は続き

なんで…とぶつけようのない気持ちを抱いていたら

何も話さないのに見透かす人がいて。

「あなたは後ろばかり見ているね。

ほら、もっと胸を張ってごらん！」

その人は、元夫にはこう言った。

「この人はちゃんと見てないと死んでしまうよ」



どんな時でも、胸を張って前を見て。

滅入った時ほど、そうしよう。

胸を張ると、空が見える。

足は大きく前に進めよう。

新しい風が当たる。



彼はもう向こう側に行ってしまったので

その言葉だけが遺された。

もしも、私の顔が気に入られたのなら

彼の遺してくれた言葉のせいかな、と思ってる。