アサリのオバチャン

年賀状を売る郵便局員の姿を見るだけで寒そうだ。

コートぐらい着せてやれよ。

つい、買ってやりたくなるじゃないか。

ノルマとかあるんだろうか、外で声を枯らしても

日銭が入るわけではないよな、とか色々考えてた。



近所のスーパーの前で、夏頃から毎日座り込んで

砂抜きアサリを売っていたオバチャンとは

明らかに生活にかかる度合いが違いそうなんだけど

アサリのオバチャンの方が、呼び声をかけるわけでもなく

文庫本片手に一日を過ごして、ゆったりしてたな。



さすがに真夏は、水に浸かっただけの

アサリを買う人はいず、「サーターアンダーギー」など

作ってきていた。



売れてないだろうな、という古本屋。

客の滅多に来ない、大通りから外れた店。

どうも、昔からそういう店でこそ

お金を使いたいと思ってしまう癖があるんだが

アサリやシジミが大の苦手なので、さすがに買えない。

（幼い頃、貝から小さなカニが出てきて

それがとても異様に思えて食べられなくなった）



日が落ちる頃には帰宅されるらしく

勤めだしてからは見かけてないんだが

やっぱり冬も同じように道に座り込んでいるのかなぁ。

一度も、お客さんがいるところを見たことない

あのオバチャンは。