誰か来て

夕方団地に響き渡る子供たちの泣き声。

一人、二人なら「転んだか、けんかしたか」ですむが

どうも様子が違う。

上の階にいる親に向かって、口々に泣き叫んでいるのだ。

「誰か来て」「早く降りてきてよ」「誰か来て」



どうやら、誰かが子供たちに言ったらしい。

「子供だけでエレベーターに乗ると、途中で止められて

悪い人に殺されるってテレビで言ってた」

家に帰りたいけど、帰れない。

子供たちはパニックになっていた。

数人の親が来て「一緒に乗るから、帰ろう」と治めたが。



「いったい、誰から聞いたの！？」

親が神経質になるのも無理はない。

同じ団地内で誘拐未遂事件があったばかり。

３０代の男性が３年の男の子を、登校時に狙った。



幼く弱い者を思い通りにしても

あなたの隙間は埋まらないんだよ。

本当はよくわかっているでしょう？

あなたを救ってくれるのは

優しい他人でも、言うことを聞く弱い者でもない。

もう、いい加減気がついてよ。