袈（け）の日

遙か昔に、確か国文学の授業あたりで覚えた。

「晴れの日」に対する「袈の日」。

特別な行事のない、ごく普通の日

と教えてもらった気がする。



特別なお祝い事のある「晴れの日」だけは

まだ使われているのに、こっちは廃れてしまった。

結構気に入ってる言葉なんだけど。

「袈の日」は、何もない日じゃなくて

色々起こるんだ。



お祭り、結婚式などの「晴れの日」が引き立つのは

「袈の日」があるから。

御馳走ばかり食べていたら、おいしく感じないよ。

前に書いたことがあるけど、一番健康でいられるのは

日頃粗食で、時たま御馳走だって。



日頃は手抜きの料理、手抜きのおしゃれをしている

私の言い訳でしょうか。

「いいのよ、今日は袈の日なんだから…」



でもね、たまーにしかやってこないお祝い事を

楽しみにしてた「ばっちゃん達」の顔を思い浮かべると

「晴れの日」の待ち遠しさ

長い長い「袈の日」のことを思ってしまうのよ。

大人

昔であれば信じられないのだが

現在の勤務先で同僚から

「○○さんは大人だから」という言葉をよくもらう。



利口に立ち回っているとか、そういう印象なんだろうか。

「大人だから」普通なら傷つくところを笑ってかわして。

あんまりほめられてる気はしないし

実際ほめてるわけではないだろう。



こんなことくらいで傷ついてたまるかとか

思っているのは確かだし

打たれ強くなって、なんでも笑って受け止めていると

思われてるようだなとも感じる。

あ、鈍感なのを勘違いされてる点もあるかもしれない。



Ｓさんのことも

私が当事者であったなら爆発しただろうけど

Ｓさんのことを決めるのは彼女自身なので

面と向かっての反抗も所長への相談もしないという

彼女に「言いなさいよ」なんて焚き付けなかった。



すっきりしてるわけではなくて

いやほんと、全然すっきりしてないんだが。

だから「大人ですね」と言われて

こんなふうに、ここでだけ「ちがうよ」と言ったりしてる。

同僚達に向かって「実は…」と言ったところで

何の意味がある。



明日もきっと、にこやかに世間話をしながら

「この人、本当は何を考えているんだろう」なんて

思うんだろうな。

あ、私以外の人はわかりやすかったか。

ＫさんがＳさんに突然仕事を教えるようになったのも

課長から入れ知恵されたんだなって見え見え。

所長はわかってて、退社願いの話の時

課長を同席させたんだな。



大人って、なんだろうね。

面接

勤務先で、男性二名の面接があった。

現在、きちんとした応接室がないので

間に合わせのような衝立越しに何を話しているのか

全てわかってしまう。



事務員募集に応じてきた方達なんだが

新卒ではないため、いろいろと聞かれる。

初めのＡさんは、知識と経験を既に持っている方で

「転勤の可能性もありますが…」などの質問にも

よどみなく答えて、面接官の印象も良さそう。

前の職場の退職理由は、かなり聞かれる。

何が問題で辞めたのか、今度面接を受けた理由は。

これからの人生設計をどう考えているのか。



Ａさんは短い時間で終了したのだが

次に来たＢさんは１時間以上もかかった。

前の職場が、ほぼ同じ職種であったため

そこを辞めて、なぜ同じような所を選んだのか。

以前に起こした交通事故のこと、彼女のこと（独身だった）

いろんなことを聞かれていた。



へえ、こんなに時間かけて、と思っていたら…

「それで、うちでやっていくつもりは本当にあるんですか」

突然、所長がきっぱりした口調で切り出した。

Ｂさんは…黙ったままだった。

「私たちに人事決定権はありません。

あなたが本当にここで仕事をしたいと思われるのなら

上司に推薦します。

ですが、あなたの表情がほとんど動いていませんでした。

私にはあなたの働きたいという意志が見えなかったので

お聞きしています。」



採用された人たちに所長が話していたことがある。

面接の時に色々聞くけれど、答を聞きたいからではなく

それによって「その人自身」を見たいからなんだって。

しかし、表情で見られているとは思わなかったな。



その後Ｂさんは、か細い声で働く意志を示し

作文を１時間かけて書くように指示されていた。

始動

インフルエンザ以降の（ほぼ）フルタイム勤務を終えて

ようやくスタートを切ったという感覚。



まだ咳は続いているけれど

電話を代わりに取ってもらうばかりでは

仕事をした感じがせず。

咳なんて、あの高熱に比べれば「どうってことない」

症状だけど、大変苦しそうに見えるらしく

過剰に同情されてます。



嗅覚消失も、耳鼻科に行って３種類の点鼻薬をもらって

少しずつ改善中。いい匂いも嫌な匂いも

出来るだけ嗅ぐようにという指示でした。

鼻の神経って、か細いんだそうな。

それでなくても、遙か昔に人間となってからは

冷遇されてきた感覚器だもの。

鼻づまりが続く程度で、簡単に調子を崩すそうです。



大好きなコーヒーの香りが

焦げたものの匂いに変わっていた時はショックでした。

トイレの芳香剤しか香りを感じなかったため

鼻を近づけて必死で嗅いでいる姿は滑稽です。



今のところ、いい匂いとおいしい匂いは

少しわかりますが、悪臭が全くしません。

生存に必要な機能が後回しになってしまうのは

いかにも現代人。

生ゴミの匂いがしないし、腐った物がわからない。

怖くて、料理の作り置きは出来ません。



最近、頭の中で先祖達が飛び跳ねています。

まだ鼻が大切な役割を果たしていた頃の原始の血よ

よみがえれ！

あれっ？

夕食にとニンニクの茎を炒めていて、突然気がついた。

あれっ？

ニオイがしない。



ご飯の炊きあがるほかほかのいい香りも

湯気を感じるだけ。

嗅覚消失してました…



調べてみると、インフルエンザの感染時に

起こることが多いとか。

インフルエンザが治ったら、嗅覚が正常になるのか。

耳鼻咽喉科に行った方が正解かも。

このままだと、まともに料理を作れないし

有毒ガスも、腐敗もわからんのでは困る。



明日は早退して病院ですな。

ああ…